道楽もん 日記

追悼:大江健三郎さん

『文学は、人間を根本から、励ますものでなければならないと思います。』

 〜大江健三郎

十代後半〜二十代まで文学青年気取っている時分がありました。

小説といえば武田泰淳、深沢七郎、そして中上健次といった土俗風で、生命や血脈のドロドロを直に扱った、湿り気のある重々しい文体のものを好んで読んでいましたっけ。

その中でも大江健三郎は特別でした。

一文で彼のものと判る、クセのある独特の文学手法が大好きで、本人による文学論も興味深く読み込みました。

愛読し始めた頃はすでに名をなしていましたが、ノーベル賞を獲るのはこの人しかいないと想っていたものです。

いちファンとして、どうしてもお目にかかってみたいと、大江氏には珍しいサイン会に神保町の書店まで行ったものです。

目の前まで進み出た際、サインの名前を聞かれ

「智慧の智、の一字です」と答えると、

「ああ、サトシ さんですね」

と穏やかに返してくれました。

(これが「個人的な体験」を書いた男か。。)

若くしてその才能は溢れていた大江氏でしたが、ご自身の息子さんが脳に障がいを持って生まれてからは、作品のモチーフの底にそれは常に深く流れ続けました。

その【才能】と【体験】の総体こそ、私にとっては薫製された妙味となって、より魅了されたように感じます。

懐かしい青春の想い出ですが、この年になった今、ページをめくったらまた違った感慨があるかもしれません。。

ご冥福を心よりお祈り申し上げます🙏

致知「一心万変に応ず」 〜2023年3月号〜前のページ

最古の国立寺院「大安寺」仏像展次のページ

関連記事

  1. 道楽もん 日記

    【病床録】一: 臨死体験

    ほとんど病気らしい病気をした事はありませんでした。それだけに今…

  2. 道楽もん 日記

    緊急事態でも、法人設立 10周年。

    決算報告書綴を眺めながら、ようやく10年過ぎたのだなと思う。3…

  3. 道楽もん 日記

    【病床録】六: 〜人生の師に學ぶ〜

    【病床録】六〜人生の師に學ぶ〜(いつにも増して長い独白のよ…

  4. 道楽もん 日記

    障害者になりました。。

    障害者になりました。。昨年夏の退院以来、日常生活の中でリハビリ…

  5. 道楽もん 日記

    【病床録】四: 〜自由自在〜

    【病床録】四〜自由自在〜意識不明の昏睡状態から目が覚めた時…

  6. 道楽もん 日記

    広島の平和記念公園から

    広島の平和記念公園訪問記初めて広島市の平和記念公園を訪れ、献花させ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 言霊・音魂・光景

    「風に吹かれて」Blowin’ In The Wind
  2. 王 道 學・德 學

    低処高思の人‼️ 鮎川義介 翁
  3. 王 道 學・德 學

    【 ごいざん師匠語録 聴聞記 】5 〜學問する意味〜
  4. ガイアの智慧

    論語指導士 研修会 @大阪
  5. 道楽もん 日記

    SDGsと、十七条の憲法!
PAGE TOP